オスグッド ってどんな疾患?
スポーツに積極的に参加している成長期のお子さんに発生する怪我で最も有名な「オスグッド・シュラッター病(通称:オスグッド)」は思春期に急速に成長する時期、男子では10~15歳、女子では8~14歳1に多く発生します。スポーツ活動を活発に行う子供の10人に1人の割合で発生します。
オスグッドは成長期に発生する牽引性骨端炎(筋肉が骨を引っ張ることで炎症が起きる)です。逆を返せば、成長期が過ぎれば自然と治っていく疾患です。専門家の中でも上記を理由に「特に治療しなくても良い」「成長痛だから放っておいて良い」と考える方がいますが、この考え方は誤りです。
Cairnsのレビューによれば、最初の診断から 2 年が経過しても、60% 以上に膝蓋腱の変化が持続し、機能的パフォーマンスが低下していました。また、数年後の 20 代前半にも持続的な痛みを経験することがあり、「様子見」で治療した場合、自然に痛みが消えない可能性があることを強調しています。
「成長痛だから放っておいて大丈夫」と安直な考えでいるとその子が成長して、高校・大学と競技レベルが上がった時にオスグッドの後遺症が原因で思う存分スポーツを楽しむことができなくなってしまったり、それがなければ掴めたであろう明るい未来を潰してしまうかもしれません。
この記事では自分の子どもや教え子がオスグッドかもしれないとなった場合、なるべく早く痛みを軽減して、最短で競技復帰するために必要なことをまとめてお伝えします。
オスグッド のリスクになる3つの原因
同じ様な環境、同じスポーツをやっていてもオスグッドになる、ならないの差はどこから来るのでしょうか?大きな原因として3つが挙げられます。
1)成長期の急な身長増大
冒頭でも記した通り、オスグッドは成長期に筋肉が骨を引っ張ることで起こるスネの上(膝のお皿の下の柔らかい所のさらに下)の痛み、場合によってはその場所が出っ張ってくる疾患です。
ここで言う成長期とは急激に伸長が伸びる時期のことで、男子では10~15歳、女子では8~14歳ごろを指します。
私事ですが、筆者も中学の3年間に年間に10㎝のペースで身長が伸びていました。このペースは筋肉が成長するペースよりも早いと言われています。急激に伸びる骨の長さに対して、筋肉の成長スピードが追いつかず、骨の長さに対して筋肉の長さが足りなくなってしまいます(筋肉の相対的短縮)。結果的に筋肉が引き伸ばされて、慢性的に過緊張状態になります。その結果、もも前の筋肉がスネの上を引っ張って痛みがでます。
2)不良姿勢
近年スマートフォンやタブレットの普及により信号待ちや電車内などではほとんどの人が背中を丸めて、うつむきながらスマホを操作している状況をよく目にします。また最近は公園で活発に遊んでいる子供が少ないように感じます。そういった生活環境の変化・運動量の低下によって猫背などの不良姿勢になっているお子さんが増えています。
猫背になると連鎖反応的に骨盤が後ろに倒れたような状態(骨盤後傾位)になります。
骨盤後傾位になると太ももの前にある大腿四頭筋が引っ張られ、慢性的に過緊張状態になります。
こういった不良姿勢が結果的にオスグッドの発症原因の一つになってきます。
3)代償動作
2)の姿勢不良の状態でスポーツ動作を行うと本来の目的とする動作が遂行できず、代償動作(本来の動作とは違う意図しない動作)を伴った動きになってしまうことがあります。その代償動作が原因で膝にストレスがかかりオスグッドの要因になってしまいます。
サッカーのキック動作を例に見てみましょう!
骨盤後傾状態でサッカーのキック動作を行うと重心が後方に残り、床反力と膝関節との距離(モーメントアーム)が長くなります。つまり、大腿四頭筋を中心とした膝関節の伸展筋が過剰に働き、オスグッドの発症を助長または悪化させてしまいます。
オスグッド をなるべく早く改善するためのストレッチ
1)ジャックナイフストレッチ
1)両手を床に着き、一方のつま先と他方の膝が来るようにセットする。
2)1の状態から手を離さないようにお尻を上げていき、膝が伸ばすように力を入れる。
3)2の状態を5秒保持して、1の状態に戻る。
4)1~3を5回繰り返す。
2)もも前のストレッチ
1)立膝の姿勢になり
2)1の状態から手を離さないようにお尻を上げていき、膝が伸ばすように力を入れる。
3)2の状態を5秒保持して、1の状態に戻る。
4)1~3を5回繰り返す。
1)Itoh G, Ishii H, Kato H, Nagano Y, Hayashi H, et al. (2018) Risk assessment of the onset of Osgood–Schlatter disease using kinetic analysis of various motions in sports. PLOS ONE 13(1): e0190503. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0190503
2)Cairns G, Owen T, Kluzek S, et al. Therapeutic interventions in children and adolescents with patellar tendon related pain: a systematic review. BMJ Open Sport Exerc Med. 2018;4(1):e000383. Published 2018 Aug 13. doi:10.1136/bmjsem-2018-000383
コメント